【中国トレンド】続く「沈浸式」ブーム 若者が求める“体験感”

皆さん「沈浸式(ピンイン:chén jìn shì)」という単語をご存じでしょうか。
中国で生活していると必ずと言っていいほど目にします。沈浸とは日本語に直訳すると没入するという意味で、流行語として2016年頃に出現し、2018年を境に多用されるようになりました。

沈浸式とは?

「没入する」という意味においてはおおよそ同じなのですが、使われ方としてはネット上、商業、学習などでややニュアンスが異なるので、それぞれの「沈浸式」の意味をご紹介します。

  1. 1.ネット上での沈浸式
  2. 2.ビジネスでの沈浸式
  3. 3.学習での沈浸式

1.ネット上での沈浸式

douyin、小红書などで沈浸式を検索するとメイク料理手帳制作などの動画が出てきます。 共通しているのはBGMや声による説明などがなく、物音だけが収録されていることです。 日本でも流行しているASMR動画に類似していますが(ASMRとは、人間が聴覚や視覚への刺激によって心地よく感じる感覚のこと)、これらの沈浸式動画は、音の心地よさではなく、静かな場所で集中して物事を行うこと、生活の何かに集中している時間を共有することが魅力として発信されています。

2.ビジネスでの沈浸式

商業においては主に遊園地などのアミューズメント施設や「マーダーミステリー(谋杀之迷/剧本杀)」、レストランなどで沈浸式が使われます。ここでは投影技術、音声、特殊効果、インタラクティブ機能などを利用して利用者に没入感を与えることで、まるで別世界に入り込んでしまったような感覚、その世界観の面白さや幻想感に利用者が入り浸ることができるものです。 ※マーダーミステリーについても別記事で解説します。

3.学習での沈浸式

VR技術などを通して、学習者にリアルな学習環境を提供し、高いレベルでの参与、訓練、技術向上をもたらすものです。英語学習などでよく使われ、生活の全てを英語で過ごすことにより、英語の思考や習慣、応用力を養います。


以上、「沈浸式」の意味の解説でした。少しイメージが湧いたでしょうか。

沈浸式が中国で爆発的に流行した理由とは


では、なぜ中国で「沈浸式」が流行したのでしょうか。

ビジネスにおいては経済発展やインターネットの急速な発展に伴い、人々は途方もない情報量に触れるようになりました。スマートフォン社会が急激に発展した中国ではその変化は特に顕著です。平面的な展示や、伝統的なエンタメでは満足できなくなり、より豊富な体験感を求めるようになりました。

また一方で中国の人々は毎日インターネットから溢れんばかりの情報にさらされており、情報過多に疲れ気味でもあります。そこでネット上においてはBGMや音声などの煩雑な要素を切り取り、物事に没入できる沈浸式動画が流行したのだと考えられます。沈浸式動画はリラックス効果もあると言われています。

学習においては、ますます激化する中国の受験競争で、中国の親は常々いかに子どもを優秀に育てるかに頭を抱えています。より効率的に知識を学ぶことができる沈浸式学習が、中国の親たちの心を掴んでいるのでしょう。                                                                                           


これから中国でのビジネスを考える際に沈浸式は切っても切り離せないワードとなりそうです。