Bilibili(ビリビリ)動画の収益モデルとは【中国版ニコニコ動画】

ビリビリ動画は中国の若年層に最も支持されている動画コミュニティです。
2009年6月26日の創業時からアニメやゲームなどの二次元コンテンツ愛好者を引き付け続け、そのジャンルでの先導者的地位を確立。

創設から12年となった現在では持ち味である二次元コンテンツ動画の配信に加えて、
音楽、ダンス、ライフスタイル、グルメ、ファッション、映画、音楽系MADムービーなどの様々なジャンルの動画も配信し、
実況ライブ配信やゲーム、イーコマース事業にまで手を広げました。

そしてビリビリ動画は他の動画サイトにはない、特色ある商業モデルを構築しつつあります。

では、その商業モデルとはいかなるもので、どのような特色と将来性があるのでしょうか?

ビリビリ動画の商業的潜在能力



中国の若年層に最も影響力のある動画プラットフォームになったとはいえ、創業以来のその商業化への道は平坦ではなく、赤字決算を繰り返してきました。

ビリビリの収益は主にゲーム事業であり、2017年度の新株式発行目論見書によるとその比率は全収益の83.4パーセントに及んでいました。
よってビリビリ動画は「ゲーム事業に依存する動画サイト」と皮肉られさえしていました。

しかし、2019年度の財務報告ではビリビリ動画の総売り上げ高は増加しており、
そのうちゲーム事業以外の売り上げが2017年度は16.6パーセントだったのが、2020年度の第三四半期には60.3パーセントに激増していました。



2020年の第三四半期の広告による売り上げ高は5.6億元で、前期比で60パーセント、前年同期比で124パーセントの増加でした。

これは総売り上げ高が前期比23.2パーセント、前年同期比73.7パーセントであったのを考えると、飛躍的な成長と言えます。

しかしこのビリビリ動画の広告による売り上げ高は、他の動画プラットフォームであるTikTokや快手(クワイショウ)にはかなりの差をつけられており、
一日のアクティブユーザー数が近く、動画のジャンルも似ている西瓜(シーグワ)視頻と比べても数倍の差があるのが現状です。



動画に広告を紛れ込ませない



広告収入を主な収入源とする他の動画サイトの多くは動画の始め、中盤、終わりに5~60秒程度のコマーシャルを挿入しています。

ビリビリ動画では大量の一般ユーザーによるユーザー生成コンテンツ以外にも、テレビ番組などの商業コンテンツの版権料を支払って配信していましたが、2014年10月1日に動画にコマーシャルを挟まないことを宣言しました

しかしこれは結局、版権を有するテレビ局などからの要求で配信する動画の中にコマーシャルを挟むことに同意しました。

このようにYouTubeなどでは普通に行われている、動画の最中にコマーシャルや広告が流れることがビリビリ動画であまり行われていないのは、ユーザー第一という伝統からのようです。



確かに動画を見てる最中に広告などが紛れ込むと、視聴しているユーザーとしては気分の良いものではありません。

ビリビリ動画は創業以来このスタイルを貫いてきましたから、いくら広告収入を増やすことができても肝心のユーザーが離れることを懸念したものなのでしょう。

この点が他の動画サイトとは一線を画す特色であると言えます。

ビリビリの商業化の形態



動画の中にコマーシャルや広告を挟むことに熱心ではないビリビリ動画ですが、起動時にフルスクリーンで5秒間開示される広告や、バナー広告、インフィード広告などの形式で商業広告を開示しています。



他にもビリビリ動画は、ターゲットユーザーに対し価値のあるコンテンツを発信することでファンを増やして商品やサービスの購入につなげるコンテンツマーケティングにも熱心で、
2020年7月に公式KOL広告プラットフォームである「花火」をリリース。

より効率的で安全なイーコマースの場を提供しました。



ビリビリ動画のアカウントには個人ユーザーだけではなく、企業の公式アカウントもあります。

企業は「藍V」という認証を得て自社の公式アカウントを使ってブランディングマーケティングをプラットフォーム内で行うことができるなど、企業のマーケティングツールとして活用されるようになっています。



ビリビリ動画は上記のとおり広告収入の面で他の動画サイトに劣るのは、やはり視聴するユーザーが広告にうんざりして離れるのを防いでいるのが大きな原因の一つでしょう。

しかし、こうしたビリビリ動画の取り組みのおかげで中国の若者に最も支持される動画共有サイトになっているのも事実です。

デジタルネイティブでモノが豊かになった90年代や00年代に生まれ育った彼ら若年層が今後消費市場の主力となってくることを考えると、
彼らに大いに支持されているビリビリ動画の商業広告による影響力と収益性には巨大な潜在的可能性があるはずです。

執筆者プロフィール

中国蘇州大学卒業。日本語検定試験1級(N1)取得

これまで、官公庁をはじめ、大手企業、芸能プロダクション等の数多くの中国SNSアカウント運用を担当。 ゼロイチのSNS運用スタートから、フォロワー数30万人増加、 年間1億円を超える売り上げ達成など多くの運用成果をあげる。

運用面では、微博、微信、抖音、快手、小红书などのメジャーな中国SNSプラットフォームをはじめ、数多くの中国SNSアプリに精通している。