中国語検定試験準4級の合格対策・方法
中国語検定試験とは?
中国語検定試験(中検)は、主に日本語を母語とする中国語学習者を対象とした試験です。
日本国内では実用英語技能検定(英検)に次いで受験者の多い語学試験であり、準4級、4級、3級、2級、準1級、1級の6段階に分かれています。
中国語の語学試験と言えばHSKが有名ですが、中国語検定は外国語学習における「読む」「聞く」「話す」「書く」能力以外の母語と外国語の関係を処理する「訳す」能力をも測ることを主眼としており、これが中国語による設問に中国語で答えることを求め、中国語の運用能力のみを問うHSKと異なる点です。
HSKは中国の大学本科への留学や中国企業で活躍を目指す方に適している一方、中国語検定は日本の企業での活躍を目指す方に適しているとも言えます。
HSKを受けたことのある方も、HSKにはない「訳す」能力をも測れる中国語検定もぜひ一度試してみることをおすすめします。
中国語検定準4級の難易度
皆さんがこれから受験しようとする準4級は中国語検定の最初級です。
公式のレベル案内によると学習時間が60~120時間、つまり一般大学の第二外国語における第一年度前期修了、高等学校における第一年度通年履修、中国語専門学校・講習会などにおける半年以上の履修終了程度です。
基礎単語約500語による発音(ピンイン表記)及び単語の意味、日常挨拶語約50~80による語句・単文の中国語訳が求められます。
つまり中国語学習の入門編修了試験であり、毎日1時間以上学習すれば三か月でも合格が可能です。
試験スケジュール・点数配分・合格点
試験日程・会場
中国語検定は1級を除いて3月、6月、11月の第4日曜日の年三回行われ、準1級と1級には二次試験があります。
- 3月第4日曜日:準4級~準1級
- 6月第4日曜日:準4級~準1級
- 11月第4日曜日:全ての級
試験会場は日本各地のみならず、中国や台湾、シンガポールなどでも開催され、申込みは郵送かインターネットで行えます。
2021年度は6月の試験が終了しましたので、残りは11月の一回のみです(2021年7月1日現在、11月試験の募集は9月15日 ~ 10月15日となります)。
ただし、中には準1級を実施しない会場や、施設利用制限等により試験の実施が中止となる会場もあります。
詳しくは2021年7月時点での日本中国語検定協会のホームページでご確認ください。
2021年現在はコロナ禍により試験中もマスクの常時着用が義務付けられています。
また、混雑を避けるために収容人数や入場の制限も行われていますので、試験当日はお早めに試験会場に向かってください。
試験当日スケジュール
中国語検定準4級は以下の流れで試験が行われます。
- 試験開始・注意事項の説明
- 解答用紙の配布
- 必要事項の記入
- 問題用紙の配布
- リスニング試験
- 筆記試験
- 試験終了
リスニングと筆記の解答時間は合計60分です。
点数配分・合格点
リスニング、筆記の配点は各50点で、合計100点です。
合格基準点は60点で、これはリスニングと筆記を合計した点数であり、リスニング・筆記それぞれに基準点が設けられてはいません。
ただし、合格基準点は難易度によって変更されることもあります。
合格のための勉強法・試験対策ポイント
ピンインを把握することから中国語学習は始まる
中国語学習は発音、声調を含めたピンインの習得から始まります。
このピンインが分からないと中国語の読み方を知ることもできませんし、正確な発音もできません。
ましてや皆さんが受験しようとする準4級にはピンインの正確な読みを習得しているか否か問う問題がリスニングにも筆記にもあるため、ピンインの学習は避けては通れないのです。
中国語、それもピンインを正確に聞き取るには皆さん自身が正確に発音できる必要があります。
ですから、中国を始めたばかりの方やこれから中国語検定に挑戦しようという方はまずピンインの読み方をみっちり学習しましょう。
このピンインの学習には基本がわかる はじめての中国語(成美堂出版)やニューエクスプレスプラス中国語(白水社)のような中国語の初心者向けの参考書を使って学習してもよいと思います。
また、CD3枚付 日本人のための 中国語発音完全教本(アスク出版)や改訂新版 紹文周の中国語発音完全マスター(アスク出版)のような発音を専門的に学習する参考書もおすすめです。
他にも中国語基本音節表(hino)のようにオンラインでピンインの一覧を確認して、
練習をしたり読めないピンインを確認したりするものもありますので、ぜひ練習にご活用ください。
学習のコツとしてはまず音声をスピーカーと同じように発音するシャドウイングと言う手法を使うことをおすすめします。
このシャドウイングは自分で音声のスピーカーと同じ発音とスピードで発音することによって、脳内に音声情報としてその発音をインプットする効能があります。
これは今後の中国語学習でも大いに使える手法なので、ぜひこの機会にシャドウイングの習慣をつけてください。
最初の半月はピンインを習得するのに費やすことがベストですが、ピンインの練習ばかりだとうんざりしてしまうことでしょう。
ですからある程度できたと思ったらさっそく基礎の文法書での学習をスタートして、そこからうろ覚えのピンインを確実に習得していってもよいと思います。
文法書は音声に合わせて読み、そして書く
中国語学習を始める皆さんは初級や入門の中国語文法書を購入するにあたって、必ずCD付きのものを選んでください。
中国語の学習は音声を伴ったものでないと意味はありません。
日本人学習者にとって中国語は漢字を使う分、学習には有利な面がありますが、文字だけで学習してもリスニング力は決してつかないからです。
ですから学習の際はまず例文の意味を完全に把握してから、ピンインの学習と同じくその例文の音声をスピーカーが話すのと同じ発音とスピードで読むシャドウイングを行うことをおすすめします。
シャドウイングは言語を文字情報ではなく音声情報として脳内に刷り込む手法です。
この音声情報の蓄積こそがリスニング力向上には必要なのです。
音声情報は自分もスピーカーと同じスピードと発音で話せなければ脳内に残りません。
スピーカーと同じように話せるようになるまで何度もやってください。
紙に書きながらやるとより効果的で、手を動かすことはその文章をより音声情報として脳内に記憶しやすくします。
むろん、最初は舌がもつれてうまくいきません。
それは普段使わない口の筋肉を使うからそうなるのです。
筋肉は使えば鍛えられるもの、何回もこなしていけば必ずスムーズに発音できるようになります。
このシャドウイングによるリスニング学習を行えば、中国語検定準4級のリスニング問題に十分対応できるようになるはずですし、筆記問題に対応した能力もついてきます。
また、中国語検定のリスニング力の向上だけでなく、今後更に中国語力自体を向上させることにも大いに役立つことでしょう。
これら中国語学習書は前述の『基本がわかる はじめての中国語(成美堂出版)』や『ニューエクスプレスプラス中国語(白水社)』でもよいと思いますが、
中国語検定準四級の学習に特化したCD2枚付 改訂版 合格奪取! 中国語検定 準4級 トレーニングブック (アスク出版)も併せると中国語検定の学習にはより効果的です。
数字・量詞・曜日は音声情報とともに把握する
数字、曜日、西暦や年月日は重要です。
実際に準4級のリスニング試験にも出てきます。
これらは文字で書かれているとたいして難しそうには見えませんが、いざ音声で流されたら反応できるでしょうか?
「xīng qī wǔ」と音声で流れたら、それが「星期五」で「金曜日」を指すものだと悟ることができるでしょうか?
「èr líng èr líng nián」が2020年を指していると瞬時に判断できるでしょうか?
文字で読んだならともかくリスニングの試験でこれを出されたら意外と反応できないことの方が多いものなのです。
ですから、試験本番前に数字や曜日、そして西暦くらいは即座に反応できるように普段の学習によって慣れておくことを断固お勧めします!
過去問題でクセや傾向をつかむ
本番前に中国語の過去問題を解いて出題の形式や傾向を把握することは不可欠です。
どんな試験にも出題の傾向や形式の特徴というものがあります。
それを知らないで本番に臨むと、この設問は何を問い、どう答えればよいか考えてしまい貴重な試験時間を浪費してしまいかねません。
ですから、これから中国語検定に挑戦しようという皆さんは普段の学習に加えて本番の四週間前までには中検準4級試験問題[第98・99回]解答と解説 2020年版などの過去問題に必ず挑戦してください。
前記『CD2枚付 改訂版 合格奪取! 中国語検定 準4級 トレーニングブック 』(アスク出版)にも模擬問題がありますのでこちらもおすすめです。
そして、本番と同じ時間配分で解答するようにしてください。
それによって中国語検定準4級の設問方法や解答の所要時間、難易度を体感し、足りないところがあれば事前に補うことも可能となるはずです。
また、問題を解いたら解きっぱなしではなく、間違えていたら何が間違っていたか確認して復習しましょう。
そうすることによって、中国語検定準4級の出題の特徴や傾向もつかめます。
自分の弱点は本番前に一つでも多く克服、これが重要です。
まさに「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。
問題サンプル、過去問題は日本中国語検定協会の公式ホームページからもダウンロードできます。
(※ 以下の問題画像の出典は全て上記リンクに拠るものです)
一度チャレンジし、レベルチェックしてみましょう。
試験問題の形式
中国語検定試験の実際の問題はどんな形式なのでしょうか?また、具体的にどの程度の難易度なのでしょうか?
ここで中国語検定準4級のリスニング・筆記の問題をご紹介いたします。
リスニング
リスニングは設問(中国語・日本語・ピンイン)の単語と同じものを選ぶ第一部分、設問の日本語の翻訳として適切な中国語を選択肢の中から選ぶ第二部分に分かれています。
第一部分はさらに5問ずつ三つに分かれ、第二部分も5問ずつ二つに分かれ、合計25問です。
以下にその設問を具体的に解説いたします。
1 設問(中国語)の単語と同じものを選ぶ問題
リスニングの第一部分は三つに分かれており、それぞれ三回読まれます。
第1問、これから読む1 から5 の中国語と一致するものを、問題用紙に印刷されている4 つの中から1 つ選び、その番号を解答欄にマークしてください。中国語は1 題ごとに3 回読みます。
上が実際の音声です。
まず中国語が読まれ、その音声に一致するピンインを①から④の中から選びます。
1問目は“dǒng”と読まれました。
問題用紙の「① tǒng」「② téng」「③ dǒng」「④ děng」の選択肢の中からそれと一致するピンインを選ぶのです。
これはピンインの読み方、声調を把握しておけば問題なく解ける問題です。
また、本番では音声が流れる前に選択肢のピンインをそれぞれ頭の中で読んでから問題に臨むことをおすすめします。
1 設問(ピンイン)の単語と同じものを選ぶ問題
続いて、問題用紙に印刷されている6 から10 のピンイン表記と一致するものを、これから読む4 つの中から1 つ選び、その番号を解答欄にマークしてください。選択肢は1 題ごとに、通して3 回読みます。
上が実際の音声です。
まず①から④の4つの中国語が読まれ、問題用紙に書かれたピンインと一致するものを選びます。
上が実際に流れた音声です。
6問目は「① Fǎyǔ」「② fǎlǜ」「③ fǎyī」「④ fǎlǐ」の4つが読み上げられ、問題用紙に記載されているのは「fǎlǜ」であるため答えは②ですね。
これも、音声が流れる前に設問のピンインを頭の中で読んでから問題に臨むことをおすすめします。
1 設問(日本語)の単語と同じものを選ぶ問題
続いて、問題用紙に印刷されている11 から15 の日本語を中国語で言い表す場合、最も適当なものを、これから読む4 つの中から1 つ選び、その番号を解答欄にマークしてください。選択肢は1 題ごとに、通して3 回読みます。
上が実際の音声です。
まず①から④の4つの中国語が読まれ、問題用紙に書かれた日本語の意味と一致する中国語を選びます。
例えば11問目では「① 晚上」「② 中午」「③ 上午」「④ 早上」の4つが読み上げられ、問題用紙に記載されているのは「朝」であるため答えは④ですね。
リスニング力だけではなく、ある程度の単語力も試されます。
コツとして、問題が読まれる前に、設問の日本語を頭の中で中国語にして読んでみましょう。
2 設問の日本語の翻訳として適切な中国語を選択肢の中から選ぶ
第2 問、問題用紙に印刷されている1 から5 の日本語を中国語で言い表す場合、最も適当なものを、これから読む4 つの中から1 つ選び、その番号を解答欄にマークしてください。選択肢は1 題ごとに、通して3 回読みます。
上が実際の音声です。
まず①から④の4つの中国語が読まれ、問題用紙に書かれた日本語の意味と一致する中国語を選びます。
例えば1問目では「① 两个月」「② 两分钟」「③ 两个小时」「④ 两点」の4つが読み上げられ、問題用紙に記載されているのは「2時間」であるため答えは③ですね。
西暦、時間や年齢などの数字、又は曜日の表し方や基本的な量詞を侮ってはいけません。
この時点で脳内に残る音声情報としてしっかり習得しましょう。
2 設問に書かれた日本語をどのように中国語で言うのが適切かを選択肢の中から選ぶ
続いて、問題用紙に印刷されている6 から10 のような場合、中国語ではどのように言うのが最も適当か、これから読む4 つの中から1 つ選び、その番号を解答欄にマークしてください。選択肢は1 題ごとに、通して3 回読みます。
上が実際の音声です。
問題用紙に書かれた日本語をどのように中国語で言うのが適切かを、音声で流れる①から④の4つの中国語から選びます。
例えば6問目では「① 几个月?」「② 几小时?」「③ 几年级?」「④ 几个人?」の4つが読み上げられ、問題用紙に記載されているのは「学年をたずねるとき」であるため答えは③ですね。
これも時間や年齢などの数字の表し方や基本的な量詞を把握し、基本的な表現を覚えておけば問題なく解けるでしょう。
筆記
筆記問題は音声がなく、ご覧になっていただければご理解いただけるとは思いますが、
どんな対策が必要かも含めまして解説させていただきます。
設問の中国語のピンインを選択肢の中から選ぶ
1.⑴~⑸の中国語の正しいピンイン表記を、①~④の中から1 つ選びなさい。
これは中国語の単語を、正確なピンインとセットで覚えていれば問題はありません。
普段の学習では正確な発音をしながら行い、ピンインが分からなかったり忘れてしまったりした単語は必ずそのピンインを調べることを心がけましょう。
設問の日本語の意味にあう中国語を選択肢の中から選ぶ
2.⑹~⑽の日本語の意味になるように空欄を埋めるとき、最も適当なものを、①~④の中から1 つ選びなさい。
これは単語力だけでなく、その単語の正確な運用法を把握していることが問われる問題です。
基本的な単語の運用法を知るためには例文とセットで覚えていれば問題はありません。
設問の日本語の意味になるように選択肢の中の中国語を並べる
3.⑾~⒂の日本語の意味になるように①~④を並べ替えたときに、[ ] 内に入るものを選びなさい。
これは単語だけでなく、中国語の基本的な文章構造を把握していれば問題なく解けますし、単語を例文とセットで覚える学習を普段からしておけば、自然と文法は身についているはずです。
設問の日本語を中国語に翻訳して書く
⑴~⑸の日本語の下線部を中国語に訳し、⑴・⑵は1 文字、⑶~⑸は2 文字の漢字(簡体字)で書きなさい。
(漢字は崩したり略したりせずに書くこと。)
この問題は正確な中国語を把握しているかだけではなく、きちんと文字で書けるかどうかを問うものです。
普段から中国語を読むだけではなく、書くことも必要となります。
ノートに一回書くだけではなく、紙に繰り返し書いて手に覚えこませる学習を心がけましょう。
編集後記
中国語に限らず、語学能力向上には語学検定の受験が不可欠だと私は信じます。
もちろんその国の言語が分かるようになって、その国の人間としゃべれるようになれるのが語学学習の本当の目的ですが、
語学検定での級の取得は学習のモチベーションになり、自分のレベル向上の見える化にもなるからです。
何より、語学検定に向けた学習はその言語の能力向上を大いに促進します。
「何としても合格する」「落ちたらどうしよう」と考えながら行う緊張感を伴った学習は無意識のうちに集中力と記憶力を高めるものだからです。
そして、もうひとつ胸を張って断言できることがあります。
語学は努力している人を決して裏切らない学問です。
地道に学習に取り組み、定期的に試験を受け続けてステップアップを続ける方ならば、3か月で準4級くらいは受かるはずです。
短時間でもいいので毎日欠かさず中国語に触れるようにしてください。
そうすればご自分では実感がなくても、一年後の皆さんは今とは比べ物にならないほど成長しているはずです。
中国語検定3級も夢ではありません!
その一年後は?二年後は?
更なる高みに達していることでしょう。
それこそが語学を学ぶ、我々の場合は中国語を学ぶ醍醐味なのです。
執筆者プロフィール
名古屋外国語大学外国語学部中国語学科卒。中国語検定準1級、HSK6級
2015年以来、特許および特許無効審査の翻訳、校閲を担当。中国語翻訳分野の専門は化学と電気。これまで、美術書や拘置所での書簡の翻訳も経験したこともあり、技術関連を中心に幅広い翻訳分野で対応可能な中国語翻訳者