【中国トレンド】10年で3兆5千億円規模!急成長する中国のコーヒー市場

中国では、近年至る所でカフェを見かけるようになりました。筆者の暮らす大連は大都市ではありませんが、ここでも1000店以上のカフェがひしめき合っています。10年前に留学していた当時はコーヒーといえばスターバックスかインスタントコーヒー、個人の経営するカフェはほとんど無いに等しかったので非常に大きな変化を感じています。

全世界のコーヒー市場を分析するデータによると、2023年の中国コーヒー市場は1800億元(日本円で約3兆5千億万円)に到達し、2025年にはなんと10000億元(日本円で19兆5千億円)に到達するという予想が出ています。
(ちょっと天文学的な数字ですよね…)

中国でコーヒー市場急成長の理由とは

なぜこのように急激に発展したのでしょうか。その理由はチェーンブランドの拡大によるコーヒー業界の競争の激化、またミニプログラムやライブ配信が発展したことなどを通して、それまで消費者に浸透していなかった「コーヒーを飲む」という習慣が若い世代の消費者を中心に急速に広がったからです。

インスタントからレギュラーコーヒーへ

中国で10年前にコーヒーといって多くの人が思い浮かべるのはお湯に溶かして飲むインスタントコーヒーでした。しかしこの数年にスペシャリティコーヒーという文化が広く知られるようになり、中国のコーヒー市場におけるレギュラーコーヒーの比率は51%以上に達し、インスタントコーヒーは40%以下に下がりました。
さらにコロナ禍以降、仕事のストレスはさらに増加し、気分をシャキッとさせてくれるコーヒーへの需要はますます高まっています。典型的な成長市場と言え、これからもこの流れはしばらく続きそうです。

チェーンブランドの店舗数が急増

また近年大都市で働く人々が小さな都市に移住しそこでビシネスをしようという流れがおき、それらの街のコーヒー需要を支えていると言えます。そのためこの数年間で大きなコーヒーブランドが加速度的に店舗数を拡大させ、新しい客をつかもうとしています。

2023年2月末時点で店舗数が最も多い3つのブランドはラッキンコーヒー(中国語:瑞幸咖啡)8339店舗、スターバックス(中国語:星巴克)6915店舗、マックカフェ(中国語:麦咖啡)2528店舗。(飲食業界のデータプラットフォーム、窄门餐眼より)

ライブ配信とネットショッピング

ライブ配信とインターネットショッピングが中国で急速に発展したことは、間違いなくコーヒー市場にも大きな影響をもたらしました。多くの珈琲ブランドがライブ配信を通して消費者にコーヒーを抽出する道具や設備、抽出方法、コーヒー豆の特徴などについて紹介したり、交流する機会を得ました。これにより、消費者がコーヒーに興味を持ち、理解を深めることができた上、さらにインターネットショッピングの利便性が加わり、購入して自分でドリップする人が増えるなど、コーヒーが家庭にも浸透していきました。

WeChatのミニプログラム

小売方面においては、WeChatのミニプログラムが伝統的な市場や電子取引とは異なる選択肢を消費者に提供しました。コーヒー消費者の年齢層は23歳から40歳の間に集中していますが、この年齢層は特に素早さ、便利さを求めているのでスマートフォン上で利用できるアプリケーションの需要は大変大きいのです。


ラッキンコーヒーのミニプログラム画面

WeChatのミニプログラムの誕生により、消費者は事前に欲しい商品を注文でき、注文してから受け取るまでの時間を削減できるようになりました。さらに店側はスムーズに消費者へ商品を提供できるようになり、店舗の運営コストを下げることにも繋がり、商品の価格をより適正にすることもできるようになったのです。

まだまだ市場は成長の余地あり

これらのカフェチェーンの急速な拡張、インターネットやライブ配信の発展、ミニプログラムの補助により、若い消費者の間でコーヒーを飲む文化が急速に広がりました。とはいえ、コーヒー文化が深く根付いている国々と比較すると、中国のコーヒー市場はまだ初歩段階です。これは、市場がまだまだ大きな可能性を秘めていることを意味します。

現在の中国の消費者がコーヒーを飲む主な理由は下記の3つです。
コーヒーの味や香りが好き(53.2%)
眠気覚まし(53.1%)
カフェの雰囲気やサービスを楽しみたい(31.3%)
また、一度に消費する金額は日本円にして約200円から800円で、多くが350円から500円の間に集中しています。(人民元1元=日本円20円で計算)

主な消費者の年齢層は2000年代以降に生まれた00後世代と、Z世代。00後世代は新しさや創造的なものを求めており、Z世代は体験性、安定性、便利さを求めています。これからのコーヒー市場のさらなる発展にはこれらの世代の需要を理解し、SNSを意識しコーヒーのコミュニケーションツールとしての面を強化しつつ、さらに便利ですぐに飲める製品を開発し、コーヒー豆の輸入量を増やすことが鍵となりそうです。