中国越境ECを攻略しよう!その2【主要なECモール】
中国越境ECを攻略しよう!その2【主要なECモール】
中国には越境ECに対応したプラットフォームがたくさんあります。選択肢が多すぎて、どれを選んでいいか悩んでしまうこともあるかもしれません。
2020年7月に経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」では、中国のECプラットフォーム事業者のシェアについて、次のグラフが提示されました。
このグラフによると、アリババグループが全体の半分のシェアを獲得していることが分かります。
アリババグループは2019 年に同国の大手ECプラットフォームの一つであるKaolaを買収したことで、同国におけるシェアを50%以上にまで押し上げました。
2番手のJD.com(京東)が15.9%、3番手の拼多多(Pinduoduo)は13.2%のシェアを獲得しています。Pinduoduoは2015年の設立でありながらSNSを取り込んだソーシャル型ECとして急成長しています。
このように、中国にはさまざまなプラットフォームがありますが、それぞれターゲット層やサービス内容が異なります。
今回は、越境ECに対応しているおすすめのプラットフォームをご紹介いたします。
1. 天猫国際(Tmall Global)
(1) 天猫国際とは?
日本でもよく耳にする「タオバオ」とはアリババグループが中国で運営するECプラットフォームで、国内最大規模を誇っています。
「タオバオ」は個人間取引(CtoC)の「淘宝網(タオバオワン)」と企業と個人の取引(BtoC)の「天猫(Tmall)」の2つのプラットフォームに分かれています。
淘宝網は日本でいうメルカリやヤフオク、天猫は楽天市場のようなサービスです。
天猫はさらに中国法人用と海外法人用の2つのプラットフォームに分かれています。
天猫(Tmall)は、中国に法人を設立してネット通販を本格的に行いたい企業向けのECプラットフォームです。
天猫国際(Tmall Global)は、中国に法人を設立しなくてもネット通販が行えるよう2013年に設立された越境EC専用プラットフォームです。
現在、92の国・地域が参加しており、取り扱われているブランドは25,000以上、カテゴリーは5,100以上にも上ります。
天猫国際は日本など中国国外、または保税倉庫からの発送のため、現地に在庫を抱える必要がなく幅広い商品が扱え、税金、商標、決済も日本で行えます。
(2)出店申請条件
天猫国際の特徴として出店に際して審査が厳しいことが挙げられます。
アリババグループは淘宝網で横行していた粗悪品や偽物の販売を是正するために、厳しい審査をパスした法人のみが出店できるモールとして天猫を開始しました。
天猫国際に出店したい場合には、出店条件を満たす必要があります。
出店審査のための必要条件
・外資企業である
・自社所有ブランドがある
・商標を取得している
・規模が大きな大手企業である
・業界第3位以内である
・自国内で認知度が高い
・売り上げが期待できる
・越境EC専門チームを持つ
申請時に必要な資料
・企業の会社成立証明証書
・企業の税務登記証明書、最新の納税証明書
・企業の代表者・店舗責任者の身分証明書、ライセンス証明
・企業の中国国外の銀行口座所有証明書、銀行預金残高証明書
出店の際に必要な初期費用
・出店保証金:25,000ドル
・年間利用料:商品により異なる(5,000ドル、10,000ドルと異なる)
・技術サービス料:カテゴリーにより異なる(売上額により全額返金)
・販売手数料
・その他、輸出関連、倉庫物流関連、店舗運営、広告費用など
(3)3種類の出店形態
①旗艦店
自社ブランドのみを販売する店舗で、自社ブランド企業の企業法定代表者を申請する必要があります。中国で商標登録を行う必要があり、商標登録証または商標受理通知書の所持が必須です。
②専売店
自社ブランド企業が開設した店舗ではなく、自社ブランド企業から授権された商品を販売する店舗です。
商品登録の際に、自社ブランド企業が正式に発効した授権証を取得する必要があります。
また、ブランド所持者が申請した商標登録証および開店の正式申請書が必要です。
③専営店
取り扱えるジャンルは1種類に限られますが、自社ブランドと他社ブランドの商品を同時に販売できる店舗です。
商品登録の際に、他社ブランド企業が発行した授権証とブランド所持者が申請した商標登録証が必要です。
2. 京東全球購(JD Worldwide)
(1)京東全球購とは?
京東商城(ジンドン)とは、2004年に創業された、中国第2位の総合型のECサイトです。
天猫はモール型なのに対し、京東は直営型で、自社で仕入れて在庫を持ち、消費者に販売するビジネスモデルを採用しています。
2015年4月には、京東商城の越境EC専門のモールである「京東全球購 (JD Worldwide) 」がオープンしました。
商品数は15万点に登り、海外企業450社以上が、1200以上のブランドを展開しています。
京東全球購には日本製品に特化した販売ページである「日本館」が開設されており、花王やDHC、ソニーや資生堂などの日本企業が、商品を販売しています。
(2)特徴
・電化製品が充実している
京東商城はもともと、PC機器や携帯電話のネット販売からスタートしたプラットフォームで、現在でも電化製品が他のECサイトと比較して充実しています。
・テンセントグループとの提携
京東商城は2014年に、中国最大級のIT企業、テンセントと戦略的提携を結びました。
テンセントは、3億人以上のユーザーが登録する中国最大のメッセージングアプリWeChatを運営しており、京東商城はWeChatからの流入を獲得しています。
(3)出店申請条件
・海外法人がある
京東全球購は海外企業の出品専用のモールのため、海外に法人があることが、必須の条件となります。
・日本で知名度がある
日本ですでにブランドとして確立していることが必要です。
・ブランドを所有している
自社ブランドの商標登録証、または他社ブランドの授権証が必要です。
・注文から72時間以内に発送できる
京東商城は、注文から発送までの時間を、非常に重視しています。そのため、注文から発送までに3日以内であることが、必須の条件となっています。
3. Duoduo International(拼多多国際)
(1)拼多多国際とは?
拼多多とは2015年に元Google社員のColin Huang(黄峥)氏によってリリースされ、急成長を遂げている中国のソーシャルECプラットフォームです。
購入者が多いほど価格が下がる共同購入のシステムを採用しているため、ユーザーは共同購入者を募るために、WeChatやWeiboといったSNSで商品情報を拡散してくれるので、自動で宣伝してくれる仕組みになっています。
2015年にできたばかりの新しいサービスですが、それからわずか2年で1億人のユーザーを獲得し、今やアリババや京東を脅かすほどにまで成長しました。 2021年にはユーザー数が8億7千万人を突破し、売上は939億元(約1兆8780億円)にまで成長しました。
2019年2月には、高価格帯の市場獲得に向けて、越境EC版の「Duoduo International(拼多多国際)」を開設しました。
招待制となっており、既存の拼多多から選出された事業者や、新規に招待された出店者のみが参加できます。
オンラインストアの形式は4種類を用意しており、35銘柄以上の登録商標を持つ業者向けスーパーマーケット形式や、ブランドの独占販売権を持つ業者向けの旗艦店などがあります。
(2)特徴
拼多多の顧客のうち、65%が三・四級都市在住者や中所得者、つまり、発展途上にある地方都市の人々をメインターゲットとしていることが最大の特徴と言えます。
アリババグループなどは、北京や上海といった一・二級都市の高所得者をターゲットにしているため、ライバルの少ない市場を狙うことでユーザー数を増やしました。
しかし、中所得者をターゲットにしているため、ユーザー数のわりに流通取引総額が伸びないという課題もあります。
4. 豌豆公主(ワンドウ)
(1)豌豆公主とは?
インアゴーラ社が自社で開発・運営する越境ECショッピングアプリです。
中国国内唯一の日本商品に特化した品揃えで、日本企業向けに翻訳サポートや物流や決済、販促活動を代行してもらえます。
中国では全く認知度のないブランドを人気ブランドに育成するブランドインキュベーション事業も手掛けています。
(2)特徴
「情報の越境」に最も注力し、ブランドの良さ、日本の商品の良さを伝える多角的なコンテンツと、ユーザー同士でのショッピングSNS機能が特徴で、常にユーザーに新たなライフスタイルの提案と発見を提供しています。
(3)費用
日本企業は初期費用・固定費が無料で出店ができることから、 中国ですでに人気の商品からまだ中国ユーザーの認知度が低い商品まで約27,500商品(2017年6月現在)を揃えています。
5. bolome(ボロミー)
(1) bolomeとは?
株式会社bolomeは、上海にヘッドクオーターを置き、2015年に越境ECのパイオニアとしてライブ中継型ECアプリ「bolome」を開発し、事業をスタートさせました。
bolomeは、スマートフォン版の生中継テレビ通販とも言えるアプリケーションサービスで、日本の店頭と中国を結び、消費者はテレビショッピングの感覚で買い物ができます。
bolomeが取り扱うのは化粧品や食品、日用雑貨など、商品数は5000点で、日本の本物を求める中国消費者の支持を受け、流通総額は月額10億円を突破しました。
(2)特徴
生中継(ライブ)による実演販売が最大の特徴であり、撮影用のスマートフォンさえあれば、視聴者とコミュニケーションをとりながら販売を行うことができます。
視聴者はライブを見ながら、チャットの要領で感想や質問を投稿でき、投稿した文章は画面上に表示されるため、撮影中のスタッフや企業担当者がその場で答えることができます。
チャイブラリー編集部まとめ
いかがだったでしょうか?
越境ECに対応しているプラットフォームは審査が厳しいという難点もあります。
しかし、専営店などに授権することで商品を出品してもらったり、代行会社に依頼したりすることで販売が可能になります。
商標登録をしていないと商品の登録ができないので、早めに申請するようにしましょう。